5月12日には石川県能登町で、初の取り組みとなる「JFA・キリン ビッグスマイルフィールド in 能登町」を開催。これはJFAオフィシャルトップパートナーのキリンホールディングス株式会社との協働によるもので、地元の子どもから高齢者まで多くの人々が参加し、ウォーキングフットボールで汗を流した。そして、5月24日には、高円宮記念JFA夢フィールド(千葉県千葉市)に被災地の小学生チームを招待し、「夢キャンプ 2024 with SAMURAI BLUE」を開催することも決まった。
能登半島地震の被災地では、これまでサッカー活動に使われていたグラウンドやフットボール施設の多くが、隆起したり、陥没したりするほか、仮設住宅が設置されるなどして使うことができない状態になっている。また、避難や転居に伴ってチームからメンバーが離れてしまったり、練習をするために遠くまで足を運ばなければならなかったりとサッカー活動に大きな支障が出ている。
そういった状況でも、サッカーへの情熱や意欲を絶やさず、「サッカーの力で前向きな気持ちになってほしい」「SAMURAI BLUEの選手たちと一緒に思いっきりサッカーを楽しんでもらいたい」というJFAとパートナー企業の思いから今回の招待イベントを企画。そして、その思いにSAMURAI BLUEの選手たちも応え、このイベントが実現した。
開催に伴う費用をはじめ、備品の手配、移動や宿泊、当日の運営・情報発信など、さまざまな形でJFAとパートナー企業が連携し、参加者のサポートに当たった。
晴天に恵まれたイベント当日、夢フィールドには70人の子どもたちが集まった。チームの関係者や保護者もピッチサイドで子どもたちを見守る。
進行役は、元サッカー日本代表で、能登で復興支援に取り組んでいる巻誠一郎さん(JFA防災・復興支援委員会前委員長)とフリーアナウンサーの日々野真理さんが務め、JFAコーチの仲野浩さんと四方菜穂さんがイベントをサポートした。子どもたちの前に立った巻さんは「このきれいなピッチで、SAMURAI BLUEの選手と一緒に、目いっぱい楽しく、元気にプレーしてください。そして、選手にいろいろなことを質問してみましょう。何よりもまずは楽しんでください」と投げかけた。
宮本恒靖JFA会長もあいさつに立ち、「代表選手とプレーする中で何かを感じてほしい。代表選手をいろいろと観察して、自分の力やプレーに変えてほしい」とエールを送った。この日、クラブハウスにSAMURAI BLUEの森保一監督が来ており、呼び掛けに応じて森保監督がサプライズで登場。その後、ゲストとして6人のSAMURAI BLUEの選手が入場すると、子どもたちはさらにヒートアップし、大きな歓声と拍手が沸き起こった。
最初は緊張の面持ちだった子どもたちも、アイスブレイクとウオーミングアップを通して選手らと心を通わせ距離を縮めていく。その後、1・2年生、3・4年生、5・6年生と学年に分かれて試合を実施。代表選手たちも子どもたちに交じって、真剣モードでプレーし、子どもたちも真剣な眼差しでサッカーを楽しんだ。イベントの最後には、選手と会話する時間が設けられ、子どもたちは用意した質問を代表選手にぶつけ、選手たちも一つ一つに丁寧に応えた。
約2時間のイベントではあったが、代表選手と濃密な時間を過ごした子どもたち。輪島サッカークラブの舩板優愛さん(小学6年生)は「代表選手といろいろなことを話した。久しぶりにみんなと練習や試合をすることができて、とても楽しかった」と笑顔で話してくれた。
それぞれに充実した表情をのぞかせ、特別な思い出を得たようだった。
サッカーで汗を流した後は“日本代表カレー”で運動後の空腹を満たし、クロージング。「今日経験したことは必ず子どもたちの心に刻まれると思う」と巻さん。最後のあいさつで巻さんは子どもたちにこう伝えた。
「代表の試合もそうだけど、サッカーは同じシーンがない。対戦相手も会場も、味方の選手も、来るパスもいろいろなことが毎回違う。でもみんな一生懸命に練習する。それは自分が苦しいとき、困ったときに普段練習したことが出るから。今日、ここでみんなはたくさんのことを学んだと思う。ここに来て得た経験を忘れないでいてほしい。自分が苦しいとき、困ったときに生かしてほしい。僕が熊本で地震に遭ったとき、石川や能登の人たち、そして全国のいろいろな人が助けに来てくれた。だから僕はみんなが苦しいとき、困っているとき、一緒に何かをしたいと思っている。今度からはみんなも困っている人や苦しんでいる人、泣いている人がいたら手を差し伸べてあげてほしい」
この言葉に子どもたちは力強く返事をしていた。
復興への道のりはまだ道半ばだ。
JFAとパートナー企業は、今後も子どもたちの夢を育むため、少しでも被災地の人々に笑顔と元気を届けるため活動を続けていく。