JFAと〈みずほ〉が取り組む価値共創活動において、JFAが掲げるサッカーを通じた社会貢献と〈みずほ〉の知見・ノウハウを掛け合わせて社会問題の解決を目指しています。その中で、若年層やアスリートにおける金融トラブル・犯罪が増加する昨今の情勢や、資産形成への関心の高まりを受けて、金融リテラシーを高めるプログラムの実施を検討してきました。
今回はそのトライアルとして、福島県・Jヴィレッジで行われた「第7回J-VILLAGE CUP U-18」(3月14日~17日開催)出場に向けて招集されたU-18日本代表の選手たちを対象に、〈みずほ〉側から講師を招き、3月13日(木)に金融教育セミナーを開催しました。
金融教育セミナーでは、株式会社みずほ銀行個人業務部資産形成チームの大橋七海さんが講師を務めました。
セミナーを行うにあたり、大橋さんは「アスリート向けは初めてだったため、簡潔にポイントや情報を整理し、JFAの方とも相談しながらセミナーの内容や資料をつくり上げていきました」とコメント。短時間ながら要点を絞り、「お金のトラブル・犯罪に気をつけよう!」「アスリートの皆さんに注意してほしいこと」「お金を蓄える方法・ポイントを知ろう!」の3つを柱に、「豊かな・楽しい人生をみなさんに歩んでもらうために」をテーマとして講義が進行しました。
「お金のトラブル・犯罪に気をつけよう!」に関しては、特殊詐欺(不特定多数の者から現金などをだまし取る犯罪)の認知件数・被害総額ともに増加傾向にあることから、巧妙化するその手口や詐欺の種類を最初に紹介。金融トラブルや被害に巻き込まれないために、「おいしい話には気を付ける」「向こうから近寄ってきてもはっきり断る」などの基本的な意識付けとともに、「一人で悩まず、誰かに相談する」(消費者ホットライン:188番/「いやや」で覚える)というポイントが共有されました。
続いて、「アスリートの皆さんに注意してほしいこと」について、近年アスリートの詐欺被害が増大しているとの推計を踏まえ、アスリートはリスクの高い投資の勧誘や詐欺などのターゲットにされやすいということが言及されました。また、アスリートならではとして、詐欺の投資勧誘の広告塔になってしまうという問題に関しても解説。「自分はそんなつもりではなかった」(大橋さん)との認識でも、詐欺に加担し、信用を失うことにつながるケースが伝えられました。
また、一般的な職種と異なるアスリートの特徴として、多くは20代~30代前半に引退するという点が挙げられます。そのため、長い人生を見据えた人生設計が必要であること、さらに現役時代と引退後の収支の変動が大きいことから、金銭感覚をしっかりと持ち、セカンドキャリアを見据えた自己資金管理の重要性が説かれました。
最後の「お金を蓄える方法・ポイントを知ろう!」では、銀行に貯金することに加えて、投資(=お金に働いてもらう)を紹介。投資をギャンブルにしないコツとして、長期間続けること、投資先を分散すること、少額からでもコツコツ積み立てるなどが伝達されました。
また、お金を蓄える、資産を形成する上で「時間」がとても大切だと伝達。投資に対する基本的な考え方とともに、iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA(少額投資非課税制度)、生命保険(年金保険)など、税の優遇措置を受けながら資産形成ができる国の制度や商品の例も紹介され、選手たちは真剣に耳を傾けていました。
なお、今回のU-18日本代表にはロールモデルコーチとして元日本代表の松井大輔さんも帯同しており、選手時代や、引退してセカンドキャリアに入ってからの考え方について、実体験を基に語る場面もありました。
「“おいしい話”を持ちかけられたことは実際にあった」「負傷による長期離脱で、数カ月分しか報酬が支払われないことがあった」「移籍により年俸が大きく変動し、税金の支払いに苦労した」など、海外でもプレーした松井さんだからこそのさまざまなエピソードが語られ、「自分のことは自分で守らなければならない。自分で勉強して知識を得ながら、セカンドキャリアなど将来のことを見据えて考えていくことが大切」というメッセージを、将来の日本サッカーを担う選手たちに届けました。
最後に、「夢ややりたいことを実現するために、努力や情熱以外に必要なもの…それが『お金』です。ファイナンシャルウェルビーイングとは、“人生を豊かにする選択ができる状態”です。皆さんの夢ややりたいこと、そして家族や大切な人の夢や選択を、お金のために諦めてほしくない。私たちはそのお手伝いをすることが使命です」というメッセージが大橋さんから伝えられ、セミナーは終了しました。
今回のセミナーは、将来を考える岐路に立つU-18年代の選手にとって、それまでの人生でなかなか考える機会がなかった「お金」への向き合い方に触れるきっかけとなりました。U-18日本代表を率いた城和憲監督も「プロになればたくさんの報酬を手にするが、お金の面で失敗する選手がいるのも現実。ピッチ上でしっかりプレーすることはもちろんだが、こうした内容を少しでも知っておくことは、選手たちにとって大きな助けになる」と話しました。
今回のセミナーの振り返りを経て、今後は育成年代などさまざまなカテゴリーでの金融教育を検討していく予定です。
■講師より
大橋七海(株式会社みずほ銀行)
今回はU-18日本代表向けということで、アスリート目線を意識して、選手の皆さんが気になるであろうポイントを中心に資料もアレンジし、なるべくイメージしやすいように話をさせていただきました。選手の皆さんもうなずきながら、前のめりになって聞いていただき、大変うれしかったです。松井さんにもご自身の経験を赤裸々に話していただき、おそらく選手も想像しやすかったのではないかと思います。選手の皆さんがご自身の夢を実現したときに、「あのとき、こうしておけば良かった」と思うことがないように、今回のセミナーがお金について考えるきっかけになれば幸いです。今後もJFAさんと協力しながら、その年代に合った金融教育を進めていきたいと考えています。
■参加選手より
千田遼(ファジアーノ岡山U-18)
税金のことや投資の話など知らないことが多くて、今後身近になっていく、とても大切な話だと感じましたし、興味を持つこともできました。今の年齢でこういう話を聞けたのはすごく大きなことだと思います。プロのキャリアはそんなに長くないと思いますし、引退後も豊かに生きていけるように、今のうちからお金のことを学んで考えていきたいと思います。
森壮一朗(名古屋グランパスU-18)
アスリートは詐欺のターゲットになりやすいなど、初めて知るようなことばかりでした。プロを目指している身として、将来のためになる話を聞くことができ、良い機会をいただけました。これから長い時間がある中で、お金をしっかりと自己管理しながら、より良いお金の活用ができればと思います。今回は要約された内容を話していただいたと思うので、もっと深く学んでいきたいです。